rui★ginkoの.................2003.08.01-10

★この日記は才能もないままいろいろな事に手を出している僕が時々書く記録です。
 執筆は演劇関係役者担当涙 銀子.戯曲演出担当るいぎんこ.そして音楽担当rui★ginko.広告業界担当ルイギンコ
     イベント業界担当吉田さんその他の分野担当ルイギンがお送りする何ら意味のない世界です。
     不定期更新か三日坊主。そこんとこヨロシク!

    ★カレンダーのタイトルのところをクリックすると、その日の日記に飛べます!
      飛べない人はごめんなさい。もうすぐ直します。

2003.08
Sun. Mon. Tue. Wed. Thu. Fri. Sat.
    01 暗い地下の懲りない面 々 02 負けるな!ケツカッチン!
03 だいじょうぶくんのだいぼうけん そのいち 04 05 ルイギン、ルイギンコを語る 06 街は唄であふれてる 07 ウィステリアを推理する・事件発生編 08 09 照和が夜明けを呼んでくる
10 四角い宇宙〜月と星が綺麗

★2003.07の日記はこちら>>>Go!(07.25-26 日記「板取村は大騒ぎ」はもうすぐUP!)
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2003.08.01
■広告業界担当
ルイギンコ

Fri.

暗い地下の懲りない面 々

ほらほら、またアタシで〜す!
最近、出番が多いでショ。どうして?ズバリ言って軽いキャラだから?
・・・・・ふっ・・・・そうね・・・・そう見えるかもね。
・・・・・・・フゥ〜。あ、煙草よ。優雅にダンヒルの紫煙を吐き出したところ。疲れ
て道ばたの石に腰を降ろしたところじゃないからね。そう言う時は枕詞として「どっこ
いしょ」がつくの。すぐ解るでしょ?これでアナタも、もう安心ね。

まあ確かにアタシ、自分でもデ・ニーロのような渋いキャラだとは思わない。
ボガードのようなキザな台詞も似合わない。
勝新のように人をたくさん斬り捨てて白眼も剥けないわよォ。・・・でも、それはイイの。
持って生まれた性格だから仕方ないの。華がありすぎるアタシがいけないのよ。

こんなアタシを育ててくれた人たちがいる。
アタシがデザイナーの卵だった頃、ちょうどデザイン業界の黎明期の名残りがまだ感じら
れた時代・・・・・今は遠い記憶の片隅・・・何だか空しい・・・。 ほら、アタシだって
アンニュイな雰囲気もひねくり出す事ができたじゃん!してやったわ!がっはっは!
今日はこのトーンで行くわね。

・・・・・眠る時間が無い程、売れっ子になった今でも、その人たちには感謝してるわ。
その時代の先輩達。脳裏に浮かぶ面影・・・みんな・・・・変人だった。ノスタルジックな
気分が台無しね。アタシが優雅に語ろうとするのを邪魔する先輩たち。・・・・それらはみ
んな変態だらけ・・・・・・。くっそー!負けないわ。

一番長く御世話になったデザインプロダクションがあったの。名前はA.C.
今はもう無くなってしまった。先輩たちはみんなバラバラ。現役で今も活躍中だけど。

名古屋市中区の上前津というビル街。その寂れたビルの地下一階にアタシを育ててくれた
場所があった。一日中蛍光灯の灯りだけがたよりの地下室のデザイン事務所。
何も広告業界の事を知らなかった私は始めてのプロの現場に入り、将来への夢を胸いっぱ
いに膨らませていたわ。そうね、Gカップぐらい。どう?あいこ珍。(掲示板参照)

それは良いんだけれど、一歩その会社に入って驚いた事は・・・地味なのよ。狭いのよ。
ムサ苦しい男ばっかりだったのよっ!もう!信じらんないわよッ!しかも、その野郎ども
がジロリと睨むの・・・まだあどけない美少年のこのアタシを。完璧なセクハラ。比類な
き情慾。実録緊縛・シバって大将!よ。

トーンを軌道修正しながらアタシの心は・・・静かに立ちつくしていたわ。
これが憧れの広告業界?
これが今の時代を先取る花形職業、グラフィックデザイナーの世界なの?
華麗でセンシブル。さっそうと流行の最先端を突っ走る華やかなメディア産業。
でも、ここはいったい何??これは、ここだけは違う気がする・・・・。
そのまま帰ろうかと思った私の肩をむんずとつかんで、足より細そうな白いスリムジーン
ズを穿いた男の人が「こんな作品を制作してます」と見せてくれたの・・・・。その作品
のファイルを開こうとしたアタシは無気味な気配を感じて周りを見渡した。
取り囲んでるのよ!このアタシを。いつのまにか強面の先輩たちが。こ、恐かったわ〜!

いつも擦り切れたサンダルを突っかけて出社して、すぐさまそれを脱ぎ捨て、椅子に裸足
で胡座をかきながらでかい声でわめき、ほとんど仕事をしているようには見えない
ヒゲ面I先輩。
口ひげはダンディなのだが、ギロリと睨む目の奥で何を考えているか解らない無気味な
熱血漢U先輩。
一見優男風、おとなしめの顔つき、実はバリバリ職人。1mmの幅の中に細い線を五本も
引ける神業Y先輩。
足より細い白ジーンズの男性がTチーフ。制作部はこれが全て。

普通の会社のイメージを勝手に描いていたアタシはまず、大きな音でジャズのレコードが
かかっているのに驚いたわ。 時々、チーフが好みの音楽をかけ換えるの。Iさんが違う音
楽が聞きたいと言って喧嘩になるの。 どっちの曲をかけるか相撲で決めたりするの。飛び
散る絵の具。空を斬るカッター。だれか止めてよう!隣を見るとUさんとYさんが賭けて
る。どっちが勝つか。・・・ねぇ、できたら・・・仕事しようよオ、みんな・・・。

Yさんが突然「本屋に行きたい!」と叫ぶ。「プランが出ないから立ち読みする!」と頭
を掻きむしってる。今、仕事中じゃないの?と思っていると、チーフは「いいよ」とあっ
さり承諾するの。そして「帰りに揚げ立てのコロッケ買って来てください」とお金を渡す
のよ。 「絶対揚げ立て。もしも冷えたやつしか無かったら、新しく揚げあがるまで帰って
こないでください。」と、仕事より熱を入れて語るの。

お昼は時間が無いからマーガリンを塗った食パンと珈琲だけの人が多いの。
それはいいんだけど、どこにもバターナイフが無い。冷蔵庫を散々さがしても。
ある時、その謎が解けたわ。 みんなパレットナイフ(絵の具を溶くために使う道具)を使
って パンにマーガリンを塗ってんの!
普通、レモンイエローになるはずの食パンが、スカイブルーになってたりピンクになって
たりするのよ!何人かで使い回すから最後の方の人はすべての色が混じって茶色になる
のよ! 信じられない!

夕方からみんなで飲みに行く時もあったわ。
随分遠くまで歩かされるなと思っていたら、近所のお店はみんな出入り禁止だった。
そいでね、やっと飲ませてもらえそうな店をみつけて散々飲んで暴れるの。その日のうちに、
出入り禁止。その後、反省しておとなしく帰るかと思ったら、まだしなきゃならん事がある、
と言って電柱に登る。よそのお店の看板を裏返す。地面に落ちた空き缶をじっと何分も見つ
めてる。もう、ワケ判んない。
遊び疲れたからそろそろ行くか、と言うからそりゃ疲れたでしょ、あんだけ暴れりゃ・・・
やっと家に帰るのかしら、と思うと、IさんとUさんは帰るのよ、仕事場に。まだ、仕事が
残ってたのかよっ!驚くアタシの目の前で酔った勢いのまま次々と魔法の様に作品完成。
一方、チーフとYさんは金山のサウナに。まあ、こっちは仕事が一段落したから、時には
いいじゃない、と思ってアタシも会社に戻って自分の仕事をしていると、明け方の四時頃、
会社に二人が戻ってくるの。あれ?どうしたの?と聞くと、朝イチ締切の仕事に取りかかっ
てもいないから、と机に向かう。だったらサウナ行かないでよ!

やがては、こういう光景を目にするアタシ・・・
初めてその会社を訪れた時 チーフと先輩たちに囲まれて見たファイルブックの中の世界。

そこには洗練されつくした、華麗な曲線とパターン、斬新なロゴタイプ、軟弱な美に果 敢と
挑戦状を叩き付けるラディカルなレイアウト。計算された彩りがほどこされた作品の数々が
清らかな乙女のように恥じらいながら並んでいた。

今頃みんなはどうしてるかしら・・・・・・変わってねえよな、ヤツらだけは。

     

2003.08.02
■イベント担当
吉田さん
&
■音楽担当
rui★ginko

Sat.

大長編〜負けるな!ケツカッチン!

はい、こんにちは。吉田です。
おや?今日は土曜日じゃないの。どうしてイベントが?とお思いの方もおられると存じます。
はい、日曜だけでは無く、土曜日にも当然、イベントが入る時がございますよ。でも、今日
は現場ではなくて打ち合わせでして、はい。今日も行って参りましたN市の方へ。

普段は事前に打ち合わせの為だけに出かけるという事は滅多にないのですが、今回は特別
イベント、夏に日本全国的に開催される「マル一昼夜電視台」の打ち合わせでございます。
昨年も御世話になりましたが、なかなかこれが大変でして、皆さんこの日はマル二昼夜ほ
とんど寝ずに働かれます。御苦労様でございます。かく言う私も家に一旦は戻るものの、
そのまま眠る事のないまま再び現場に出て参ります。
昨年もすでに疲れがピークに達しておりました二日目の朝、現場に出る前に同じイベント
東京方面で、ずっと走っておられたT.Nさんのお姿を拝見いたしまして、私も頑張らねばと
出かけた次第でございます。

本日は明け方まで、広告担当ルイギンコが仕事をしておりまして、少しだけの眠りの後、
電車の時刻がやって参りましたので出かける事にいたしました。
予定が一杯、ケツカッチンの一日がすでに始まっておりました。

私はどんなに忙しくても冷静沈着をモットーとしておりますので、先日のルイギンコの日記
のように物事が裏目に出る事は滅多にございません。
まず、最初の予定。高級本革の手帳でスケジュールを確認いたしました。お昼の11時過ぎ、
いつも御世話になっておりますイベント会社のH井様と現地の近くの喫茶店で待ち合わせ。
お食事を御一緒させて戴く予定でした。
余裕をかまして私は悠然と服を着替えようといたしました。ところが連日の曇天続き。
着て行くべき服が洗濯機の前に、うずたかく積み上げられております。
冷静な私はこれくらいの事では動揺いたしません。
クローゼットを開け手に触れた服を着て、今日のダンディぶりを鏡で確認。
鏡の中にはパンキッシュで危険な匂いをほとばしらせた吉田さんが立っていました。
い、いけない!イベント営業用の衣装はすべて洗濯篭の中。
ライブ用の衣装しか残っていなかったのです。・・・・・わ、私は大丈夫。
ここで焦る事など持っての他。私のプライドが許しません。
何とかおとなしめの服装を選び、厳かに着用。荷物を確認。
自分でも恐ろしい程に完璧です。
資料も忘れずに。自分でも惚れ惚れするようなクールさです。
おもむろにドアを開け、ドアに鍵を・・・見当たりません。

鞄の中もポケットもどこにもありません。時計はもう出なくてはならない時刻ジャスト。
私は落着いて靴を脱ぎ散らかしてキッチンに戻り、クールに冷や汗をかきながら探しまくりま
した。
こういう時に限って何故この居場所を選ぶのでございますか!とどなりつけさせて戴きたく
なるほどの場所に鍵はひっそりと息を殺しておりました。私は、鍵によくこういう目に合わさ
れます。

エレガントなしぐさで私はことさら鍵をゆっくりとかけました。
マンションの下に降り、自転車置き場に行って気がつきました。
本日夜には、実は音楽担当rui★ginkoのライブがあるとやらで、大きな荷物を・・・ギター
ってんですか?あれをこの私がわざわざ担いでまで出かけるはめになっております。
いつもの自転車で地下鉄の駅に向かう時間しか予定していなかった私は、今日は自転車に乗れ
ない事実と今まさにこの瞬間、直面させられましたが大人ですから泣かずに駅まで歩きました。
競歩状態になっていたかも知れません。

切符のお釣を機械が数えている間に、地下鉄は行ってしまいました。

切符売り場にギターを忘れて取りに戻っているうちに、二台目が行ってしまいました。

H井さんに電話をかけておこうとした時に地下鉄が入ってまいりました。

H井さんの電話にコールしている途中で地下鉄が発車して不通 になってしまいました。

・・・・人生素敵じゃありませんか。

 

名鉄名古屋駅、切符を電光石火で買い。ホームに行くと飛び乗りました。
これで、ぎりぎり間に合う時間・・・。油断するのは早かったのです。
途中乗り継ぎの待ち時間が長い。遅れると判断した私はタクシーを降車駅に呼んでおきました。
冷静です。クールです。パーフェクトです!

N市Y駅についてタクシーに乗り込み車の中でも心は走っておりました。でも・・・・・遅れて
しまいました。結構ハマる時は気持ち良いくらい裏にハマる吉田でございます。

H井様はとてもお優しい方で、先日、rui★ginkoのライブをその会社の方々と御一緒に聴き
に来て下さいました。
本日、約束に遅れ、さらに余計な荷物を担いでいる私をご覧になってもお許し下さいました。
そのお心の深さに吉田、不覚にも思わず落涙致した次第でございます。

いよいよ打ち合わせに入ります。おおっ!ハムスターさんが今日もお優しい笑顔でお迎え下さ
っているではありませんか。こっそりとハムスターさんの御協力の元にギターを魔法で消しま
して、何くわぬ顔で打ち合わせに入った吉田でございます。

一つのイベントには本当にたくさんの方々のお力やお時間がかけられているのだなアとつくづ
く思いますね。本日は本番前の最終打ち合わせと言う事で、一通り現場がまわせる様にチェッ
クをしなくてはなりません。皆さん、真剣にお話し合いをしておられる中で、ひとりぼーっと
しているのは吉田だけでございました。でも、本番ではがんばりたいと心に決めております。

午後三時頃になりましてもまだ、皆さんお忙しく働いておられる。吉田には刻一刻と名古屋入り
する時間が迫って参りました。ウィステリア様(掲示板御参照下さい)のおっしゃるタイムリミ
ットも、何だか解りませんが迫って来ておるようです。しかし、こちらの方の時間はもうギリギ
リというところまで来ております。

その時、H井様の一言が出ました。

「吉田はこの後、ケツカッチンですので、宜しくお願いいたします」

おおっ!何と有難いお言葉。私はそのお言葉に救われまして、ひとりお先に失礼させて戴く事
となりました。本当に心苦しく感じながらも、イベント本番当日は、命をかけてでも頑張り通
す事を胸に固く誓いながら・・・。

 

N市に流れている大きな川。そこに大きな橋がかかっております。
吉田は真夏の日射しの中、背中にギターを担いで長い橋を渡っております。
名古屋に戻る為、Y駅に向
かって・・・。
蝉時雨が遠くから届きます。
ふと子供の頃の記憶が蘇ります。
しかし、その感傷にふけっている場合ではないのです。
時間に追われる毎日。
自分が好きで選んだ道。
その道で出逢ってくれた人々。
その人達の優しさに背中を押してもらいながら、 一歩ずつ歩み、
倒れた時は支え起こしてもらいながら、
ゆっくりゆっくりと僕、rui★ginkoは今、歩いているんだ。

僕は改めて背中のギターを担ぎ直した。

 

名古屋市港区に二週間ぶり。歌をぶら下げて向かう。
前回、一時間半もの時間、ステージに居座り続けてしまった僕は反省の意味を込め、曲数を減ら
した。しかし、どう計算しても今夜は二時間かかる・・・変だ?何がいったい・・・?名古屋に
向かう電車の中で僕は悩んだ。 そして僕は次の瞬間、もうネタはバレているだろうが気がついた。
MCが長過ぎるのだ。

何しろ二週間の間、様々な事があった。どう考えても全てを話すと上方古典落語「東の旅」よ
りも長くなってしまう。僕が悩んでいるうちに名鉄電車は名古屋についた。
本日のライブ会場「照和伝説NAGOYA」へ入る時刻は過ぎている。
すでに四時半。 あわてて近鉄の切符を買う。改札に走る。駅員さんにホームを聞く。
ホームに走る。電車がすでに入っている。飛び込むと同時に発車。 車内の十分程の時間。
今日のステージのイメージをする。

蟹江駅到着。タクシーに駆け込む。運転手さん話好き。僕も話好き。気分を救われながら
「照和伝説NAGOYA」へ着。

二週間ぶりの心の故郷。随分長い間会えなかった顔。広がる安心感。

 

池田利明さん。シンガー。ソングライター。「照和伝説NAGOYA」支配人。プロデューサー。
その歌声は時に切なく同時に熱く、聴く人の一番深いところをめがけて響いて来る。僕は
こんなに優しい人に出会った記憶が無い。池田さんにこのホームページの話をした。すぐさま
クラシックギター奏者の大嶋さんに「おい、俺と大嶋君の悪口を書いて発信してるそうだぞ」
僕も口が悪いけれどこの人にはかなわない。

大嶋芳さん。世界的なクラシックギタリスト。「スペイン・ギターの王族」ロメロファミリー
門下で十年以上に及び直々に師事。合衆国、カリフォルニア州立サン・ディエゴ大学音楽学部
演奏科卒業、音楽学士号修得。す、すごい。僕はこの人と一緒に毎週土曜日「照和伝説」で同
じステージに立たせて戴き、帰りは御一緒して戴き、僕のどうしようもないクラシック音楽に
対する質問に丁寧に応えて戴いている。ステージのMCはいきなりのラテン語である。日本語
があまり得意では無いと言う。なのに、ラテン語を全然知らない僕が楽屋で話していて、もの
すごく話が理解できるのは何故?もしかしてそんなあなたはお茶目さん?

今日のステージにどれくらい時間がもらえるか池田さんに聞いたら「30分」
おっと!やはり、まずかったのか前回の乱闘が・・・と、思ったら、何と今夜は出演者6人。
持ち時間綺麗に割ってお店終業時間一杯いっぱい。力のあるお店には人が集まってくるのです。

本日トップrui★ginko。二番手、明るい女性歌手、真中愛菜さん。三番手、驚異のロメリスタ
大嶋芳さん。確実なバッテイングで二塁打。クリーンナップの猛攻が始まる。四番バッター、
誰もが待ち望んでいる実力派シンガー、美幸さん。飛ばす飛ばす。五番、「照伝」新ジャンル
下ネタ担当(こらこら)Dick佐々木さん。別のモノも飛ばしました。そして大トリ、我らが
池田利明さん。本日すべてのステージのシメ。これだけ強烈な濃〜いライブ空間を徐々に自分の
世界に引っ張って、聴かせ笑わせ泣かせて見事ライブ最高潮に盛り上げてシメてくれました!
さすが!

「照和伝説NAGOYA」でのステージはruiにとっていつも中身が濃いのだけど、
今夜は特に濃すぎて粘着力も強かった。

まず、池田さんと大嶋さんが本番前から変だった。
池田さんはリハーサル段階で、何かおかしなところのスイッチが入ったのだと思う
「レトロモード」になってしまい、次から次へと懐かしい歌の連発。
本番前に新人の僕が真面目に練習しているところにまでやって来て、僕を脅しギターを奪い取っ
てビートルズから演歌まで勝手に歌いまくり。新曲まで作る。迷惑な先輩です。
その横で大嶋さんが年代物のギターでそれに合わせて演奏。場所がステージだったらまだ納得。
お店の裏の空き地。田圃に向かってだよ。蛙に聴かせとんのんか?

大嶋さんは生っ粋のクラシック世界の住人。モー娘。は聴きません。岡林も知りません。
池田さんの歌う懐かしい歌の全てを知りません。美空ひばりはどうですか?ああ、名前だけ
何となく・・・。これマジです。

この二人の先輩方に関しては詳しい情報やエピソードを(こっそり)発信する予定。
とにかく変な人たち。でも、ふたりともすごい!

僕の友達のジョーさんが、体調を根性で持ち上げてタクシーで駆け付けてくれるそうな。
初めて来る場所なので果たして間に合うか?必死になって電話で誘導する僕の携帯に何故だか
クラシックの音色が・・・・・・大嶋さん!
「僕、今、必死なんですから」
「いや、BGMをと思って。」
「・・・・。」
普通、世界的なギタリストはこんな道ばたで演奏しないぞ!

僕のステージ開始の1分前にジョーさん到着。お店に案内して、そのまま走って楽屋に回り、
ギター引っ付かんでステージに。ほ、本当に、これ、本番?

ステージ終わってホッとしたのもつかの間、スタンバイ中の美幸さんから謎のひとこと。
「ginkoちゃん。私のステージの最後に名前呼ぶから、帰らないでね」
な、何が起こると言うのだ。
ruiは覚悟してその時を待った。そして美幸さんの聴かせるステージが最高潮に達した時
「ここでちょっと・・・ginkoちゃん」き、来たっ!
恐る恐るステージに上がる僕に「ツイストできる?」「ツ、ツイストォ?」
踊りも歌もからっきしダメな僕はビビりながらも名曲「ダイアナ」を御一緒させてもらいま
した。感激!

他のミュージシャンの方達のお話も一杯ある。中身が濃すぎてキリがない。
実際に生で触れて戴くのが一番。
しかし、 徐々にそれらの模様はここで語られてゆくでしょう。
心して待っとれ!マブダチ真中愛菜ちゃん。Dick佐々木!いいぞ!飛ばせ!

気がつくと自分のステージの記憶はほとんど残っていない。それ程、強烈な夜だった。

     

2003.08.03
■大丈夫君

Sun.

だいじょうぶくんのだいぼうけん そのいち

きょお は にちようぼ で うれしい

よそださんも いべんとのおしごと が おやすみで うれしい

よひださんは もうすぐおひこし を しますだから

きょお おくさんの いちご さんと おひこしさきで つかう 

でんかせいいひんん を かた。

 

だいじょうぶ くんも ほしがおかの なんとかでんき に ついていったよ

じてんしゃ で ひがしやまどぷぶつえんの よこの みちお のぼっていった  

ほんとうは ぞうと かばが みたかった でも がまんした ぼくは えらい

でも とらも みたくなった もっと がんばって がまんした ぼくは えらい

 

ほしがおかは ひとが いっぱいいました おわり 

おわらないよ これからでんきやさんにいくから

 

でんきやさんのちかくの すかいらーくで たべたい

がまん できたぼくはえらい

だいじょうぶ だいじょうび

 

せんたくきと てれびと くーらと みて 

じゅうす をかった

 

そいで かえってきた

 

るいさんのおくさん いちご さんは おかねもってる

だいじょうぷ だいじょうべ    うふふ

2003.08.05

■その他担当ルイギン

Tue.

ルイギン、ルイギンコを語る

この二日間は、広告担当ルイギンコが仕事をしている。
めずらしく仕事中のヤツは口数が少ない。一見、夢中になってやっているようである。
その変わり仕事に取りかかる直前までは本当に良く喋っている。
仕事場には他に誰もいないから当然、独り言である。
仕事をする時、ヤツは焦っているがゆえにおかしな行動を取ることが多い。
これは真実のドキュメントである。

「あ、そっかあー。そういう事ね」
何かに納得している。
「Yeah! いけるわ。いけるわよ〜!」
自分に言い聞かせている。時計を見ながらである。
多分、締切りギリギリまで遊び過ぎてしまい、間に合わないかもしれないという不安を打ち消
しているのだと思う。
「大丈夫。あと六時間あるわ」
この時点で夜中の二時。寝る時間を計算に入れていない。
「あ、しまった!あれセットしてあったかしら」
不安の中でもビデオの予約の方が気になる。
「あ!やっぱりしてなかった。危ない危ない・・・良かった気づいて」
おいおい、仕事場から
出ちゃったのかよ。
「珈琲飲みたいなア、みたいなア・・・ふふふ」
意味も無く笑ってる。迫る締切のプレッシャー
に完敗している。
「飲んでから頑張ろうっと!」
頑張ってから飲め。
「あれ?これ腐ってる?・・・大丈夫みたい。モグモグ」
キッチンに行った条件反射で冷蔵庫を開け、賞味期限の過ぎた和菓子を見つけたらしい。食ってる。
もしも、腹痛で仕事ができなくなったらなどとは考えてもいない。責任感が無い。
「ほお〜ら、お腹も痛くなりませんんん〜でしたあっと。ザマアミロだわ」
誰に言ってる。自分の体をつかって実験するな。
「さて、お湯を湧かすのが五分。珈琲入れて全部で十五分。大丈夫、残り五時間四十五分。楽
勝!」
本当は普通のペースでやるとマル一日程かかる分量の仕事である。ヤツはこの時点でまだ
手をつけてもいない。
「う〜・・・・早く湧きなさいよ・・・」
お湯を湧かしている。一応、焦っているらしい。

ヤツは普段からぼ〜っとしている時にも仕事をしている時がある。
頭の中でレイアウトを考えていたりコンセプトを立てていたり。
この種の仕事の人は結構そうしている事が多いようである。
雑誌をぼんやり眺めているように見えて、必死でヒントを探っていたり、
煙草を吸って目を閉じていても、イメージの尻尾を捕まえるのに懸命だったり。
最近俺は、そういう事が解って来た。
お湯を湧かしながらもセンスの無い感覚をフル稼動して何かを考えている様子だ。

「さてと珈琲入ったし、落着いたっと。あらっ!三十分も経ってるわ!」
計算が甘い。
「仕事しなきゃ、もう本当に取りかからなきゃ・・絶対、もうダメ!」
大騒ぎするならもっと早くから仕事に取りかかれ。
「え〜っと、早く立ち上がンなさいよ。時間が無いのよ、アタシには!」
Macのせいでは無い。
「さてと、仕事仕事!え〜っと、資料はどこだっけ?」
乱雑な机の上を探す。手が震えている所をみると、かなり時間の限界を感じている様だ。
「あ、あった。何々・・・えっ!こんな仕事だったのオッ!」
資料に目を通してもいなかったのがバレる。
「困ったなあ・・・これ、どういう意味かしら。電話で聞いてみるしか無いか」
こらこら、今、何時だと思ってる。
「あ〜あ、無理か。明日の朝八時には納品しなきゃいけないし。電話できけるのはギリギリで七時
からね。常識で言っても。それじゃ間に合わないわっ!」
お前に常識は・・・・無い。
「仕方ない勘でやるしかないわ。不可抗力よ」
勘で仕事をされちゃタマらんだろう。
「いけない!もう三時!あと・・・五時間か・・・・・楽勝ね」
こ、こら!ゆったりと落着くな。
煙草に火をつけるな。
珈琲のお代わりを入れに行くな。

「さて、もう、本当に、もう、何があっても、ふんとにもう・・・取りかからなきゃ。」
言い聞かせるのはもういいから。
「嘘でもいいから」
現実なんだよ!
「ようし!・・・・ちょいちょい、と。これをこうして。えっと、ここの所は解んないから適当に
・・・そいで・・・もって・・・・」

一応、始めたらしい。何とか一安心。
俺も珈琲でも飲むか・・・。
「・・・眠い」
な、なに?ダメだ!今夜はダメだ。眠っちゃダメだ。あと、四時間半。ガンバレ!
朝には寝られるんだから。
「う〜・・・限界が・・・」
解ってる解ってるよ。お前が昨夜も寝ていないのは。眠いのは解る。
でも、ここで寝たらアウトだ。頼むから仕事だけはやっちまってくれ。
「・・・残ってる作業はあと、必死にやって三時間十五分。・・・プリントアウトに十五分。メー
ルの文面を書くのに十分。合計・・・三時間四十分。今・・・三時四十五分。締切まで四時間十五
分。・・・・三十五分・・・眠れるわ」
頭が働いていなくてもこういう計算はできるんだな。
「う〜ん・・・でも、ダメ。トラブったらアウトだわ」
え、エライぞ!もしもの時の考慮もする。
それでこそプロだ!もっと早く取りかかってればもっとプロだ!いいぞ、がんばれ!
「・・・・・・。」
・・・・お、おい。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
・・・・・こ、こらあっ!お前は今世紀最強の駄目男だ!頼むから起きろ!
「必ずや姫をお救い申す!ハッ!・・・?・・・・・・・・・・・何?・・・眠っちゃった?」
お、起きたか。目を醒ませ!覚醒しろ!
「・・・・・いけなあ・・い・・・・こーひー、飲まなきゃ・・・」
そうだ、とにかく動け!
「こ、コーヒー・・・キッチンに・・・あ、イタっ・・・」
ふらふらしてやがる。まだ、頭が寝てるのか。記憶にも残ってない行動なんだろうな、きっと。

お、おい・・・・どうした?・・・・・戻って来ないぞ。

「ZZZZZZZ・・・・・」
そ、ソファーで寝るな!起きろ!猫と一緒に丸くなるな!

「・・・・・タミさんは・・・・野菊のような・・・ヒトだ・・・・ハッ!・・・・・・・・
・・なあに?」

夢だ!夢なんだよ!自分を取り戻せ!お前は墓に野菊を添えている場合では無い。
「あらっ!もう四時半!あと三時間半!やばーっ!」
そ、そうだ。いけえーっ!やれーっ!
「・・・・・・・」
お、おい。また寝たのか?・・・・お。マウスが動いてる。
無駄な独り言がピタリと止まった。
やっと、世界に入ったか・・・。

大体、仕事に取りかかってから三十分程経過すると仕事の世界に入る。
元来、好きで初めた仕事だから、世界に入ると夢中になる。
声も出さないし、煙草も吸わない。
今聴いているCDが止まっても替えに行く時間が勿体無いと思うようである。極端なヤツである。
余裕を持って仕事をして欲しい。

 

今までのヤツのデザイナー生活で一番追い詰められた話をしよう。
とある教育出版のテキストの表紙のデザイン。
その日のお昼十二時きっかりにファクスで納品という話であった。
先日から例によって徹夜で別のページ物に関っていたヤツは、当日の朝、十時になっても前日か
らの仕事に追われていた。トラブルがあったのである。
刻一刻と締切の時間が迫る。表紙のデザインは普通、急いでも三時間はかかる。
もう、限界をとっくに越えている。
まだ、ページ物の対応が終わらない。

午前十一時。あと一時間で納品だ。でも、まだページ物の対応をしている。
表紙のデザインには手もつけていない。
とうとう十一時半になった。
今、制作しているページ物のイラストを描きながら、表紙のデザインのプランを考えなきゃヤバい
と思ったヤツは、手を動かしながら考え初めた。
あと二十分。ページ物の仕事が終わった。
ページをまとめて納品の準備をして時計を見た。
十一時四十五分。あと十五分で納品。まだ、作業にとりかかってもいない。プランも出ていない。
何も考える暇も無くヤツはコピー機のふたを開けスイッチを押した。
真っ黒な紙が吐き出される。裏にスプレー糊を拭きつけ原稿に張り込む。あと十分。
カッターで黒いコピー用紙をシルエットで切り出す。モチーフは鳥。作業五分。
残り五分、アウトか?と自分に問いかけながら原稿にデザインの経線を引く、ベタを塗る。
あと三分。文字をかくレタリングに取りかかる。下書き無しでいきなり本書き。
二分経過。 ファクス台に原稿を置く。ダイアルする、コールする。
原稿がファクスに飲み込まれ切った。時計を見たらあと十秒。間に合った。

ちなみにこのデザインはプレゼンを無事通 過。
しかし、ぐったりとしたヤツはクライアントの言葉のその意味も、把握できていなかった。

この時の恐怖をヤツは忘れていない。

なのに、今日もくり返してる。学習能力が無いのだ。
おっ、八時になった。どうやら仕事が片付いたらしい。
お疲れさんという前に、とことん反省して欲しいものだ。

・・・・・直しが出たらしい。まだまだ眠りはヤツに訪れない。

     

2003.08.06

■その他担当ルイギン

Wed.

街は唄であふれてる

それにしてもこの日記、日記じゃねえな。
当日の出来事をすぐに発信してないから鮮度がねぇ。
ま、元々昔の出来事とかいっぱい書いてあるような内容だから、はなから鮮度も何もないけど。
目標*追いつけ!今日という日に!

     
■音楽担当 rui★ginko  

ども、音楽担当のrui★ginkoです。
僕はこのところずっと、ほとんど毎日家を出ずにすごしている。
一年で一番好きな季節、夏が真っ盛りだというのに・・・。
蝉時雨のシャワーを浴びたい。太陽の日射しを全身で受け止めたい。
でも、叶わない。
久しぶりに表に出たかと思うとそれは、煙草が切れて近所のタバコ屋かコンビニに行く程度。
そんな時に、改めて夏である事に気づいて驚く。

今日も焦ってた。
あ、これはルイギンコのせいだよ。アイツがもたもたしてるから・・・。
今日もMacの中の世界を覗き込んで、もう何時間たったのだろう。
その世界での唯一の愉しみは煙草と珈琲、そして甘いオヤツだけなんだ。
その数少ない僕の愉しみのひとつ、煙草が切れた。
ルイは出かけないでェ、と懇願したけど僕には知ったことじゃない。
振り切って何時間ぶりかの外の空気を吸った。
名古屋主要道路に面した僕の家の前は車で一杯。でも、そんな汚れた空気でも嬉しかったんだ。

近くのコンビニに煙草を買う為に歩いて行ったら
そのお店の前の駐車場の車止めに二人の男の子が腰掛けている。
コンビニ前でタムロしているような、おっそろしい方々とは口を聞かないように心掛けている僕は、
さり気なく通り過ぎようとしたがその瞬間、ん?どこかで見たような・・・。

それはボクの息子が御世話になってる学童の指導員さん、T笠クンとYくんだった。
何と!彼らはいつから不良になってしまったのか?
親に隠れて煙草を吸う為に、集まる場所がここしかなかったというのだろうか?
次の瞬間、彼らがとても親しみやすい笑顔で手を振ってくれたんだ。
彼らの唯一の休息、お昼休みの時間だった。


T笠クンもYくんもこの春から学童の指導員として働いている。
育ち盛りの小学生や時にはその弟や妹、そして、中学生になったOBの子供達が訪れる学童保育所で、
毎日子供達に、学校ではけっして体験できない大切な事を伝えながら、一緒に遊び育ててくれている。
彼らの他に、指導員さんは全部で八人。
みんな子供の立場をよく理解し、子供の気持ちになって優しく厳しく接してくれている。
僕はみんなの事が大好きだし、とても尊敬してるんだ。

この春にT笠クンとYくんが入って来てくれてから子供達の間であるブームが巻き起こった。
ギターに挑戦。
それまでカードバトルやサッカーにいそしんでいた子供達の生活の中に新しくギターを引いてみた
いという夢が生まれた。一台しかないギターをみんなで取り合って弾いている。
そのきっかけは、T笠クンとYくん二人とも音楽をやっている人だったから。
この学童でお互いに初顔合わせの指導員さん。 偶然、二人ともギターが弾けたからだ。

そんな二人がコンビニ前の駐車場で不良していた。
僕が仕事場で焦ってるルイギンコの事なんか、綺麗さっぱり忘れて、すぐさま横に腰を降ろした事
は言うまでも無い。

T笠クンは叙情的な歌を武器に、とても深みのある声でハートを直撃してくる。
Yくんは僕が始めて学童で出会った時「あ、この人が新しい指導員さんだ。御挨拶しなきゃ」と口を
開こうとした瞬間、彼の方から「僕、ミスチル完全コピーしました」という挨拶を受けた。随分、変
わった挨拶だなあと思い、僕はいつもの「我が輩はruiである。人気はまだ無い」という挨拶ができな
かった。


彼らはともにストリートミュージシャンを体験している。それは僕にとって未知の領域だ。
ギターを担いで街に出て歌う。
コンジョの無い僕は未だ実現できずにいる。
芝居の世界でも何年か前に、街角で公演を打つ事が流行った。
コンジョのない
涙銀子はハコにこもりっきりだった。
友達にストリートパフォーマーのジャグラーがいる。
大道に劇場を一瞬で建て、通行人の足を止め夢の世界に誘い、
ショーが終わると一瞬にして劇場をたたむ。街にあらわれる蜃気楼だ。
コンジョもゲイも無い僕には真似もできない。

街で歌う動機は何だろう?
歌う場所が無いからか?練習場所が無いからか?沢山の人に聴いてもらいたいからだろうか?
偶然の出合いを求めてるからか?自分の度胸を試しているからか?
・・・・体験の無い僕はその理由を探っても、貧困な発想しかできない。
街頭でなくてはならない理由が思い付かなかったのだ。ずっと前から。

街で歌っているミュージシャン達の中には、僕に取って
自然に足を止めさせてくれる人とそうではない人がいる。
たった1人でぽつんと街角に立って歌う。
誰も聞いている人もいないのに、何故だか通りすがりの僕の心に切り込んで来る歌唄いがいる。
反対に沢山のお客に囲まれて笑い声や歓声の中で歌っているのに
僕にとっては世界を共有できない歌唄いもいる。

でもそれは、僕の感性にひっかかるかどうかという様な、面倒臭い問題じゃない。
彼らの世界が開いているか閉じているかの違い。それだけ。
根性や情熱は当然みんなに感じる。でも、僕はきっとそれだけじゃ物足りないんだ。
多分、これは僕の基準。

そんな僕は、いつしか彼らから取り残された様な気がしていた。

ずっと前から話をしたかった歌唄いたち。
誰にも束縛される事無く、街に自分の居場所を自由に作り
サツにパクられても次の日には何事も無かったかの様にまた唄いに来る彼らたち。
歌と一緒に生きている彼らたちと僕は本当に話をしたかったんだ。

T笠クンとYくん
僕の知らない歌との関係を体験して来た二人に出会えた。
歌は彼らの心から生まれ、部屋を飛び出し街で解き放たれ、その先何処へ向かうのだろう。
僕はその行く先を訪ねてみたい。目指す彼方に何を見つめているのか。

今日も街は唄であふれてる。
僕は随分昔に忘れてしまった恋人にまた再会できるかも知れない 。

     

2003.08.07

■難事件担当 
名探偵 銀子一耕助

Thu.

ウィステリアを推理する・事件発生編

その事件は突然起こった。
2003年7月30日の深夜。日付けが翌日に替わるのを合図にしたかの様に
一通の書き込みがrui★ginkoの掲示板に記された。
全てはその一つの書き込みから始まったのだ・・・・。

私の名前は「銀子一耕助」私立探偵である。
小学生の頃からシャーロック・ホームズと怪盗ルパンに夢中になり、
いつか将来こういう難事件を解決する名探偵になろうと心に誓うような
幼いながらも非常に頭脳明晰な子供だった。
桐野宮子、謎の人物。誰だこれは・・・?あ、誤変換か。
霧の都、ロンドンのベーカー街に住まい、助手ワトソンと次々と難事件を解決するホームズ。
告白するが、実は私はホームズよりもルパンの方が好きだ。
フランスの日射しのように明るくて痛快、怪盗なのに弱い者の味方。
義賊のルパンのほうが複雑な人間性をそなえている気がして憧れた。
しかし、さすがの私も親に「怪盗になる」とは言えなかった。どうすれば資格が取れるのか。
何学部に進路を決めればいいのか見当が付かなかったからである。

怪盗への夢を諦めた私は中学生の時、
自分で小さな紙切れに鉛筆で「私立探偵 吉田某」と書いてクラスメートに配った。
名刺である。・・・探偵の依頼は一件も無かった。
仕方なく事件解決の注文を取りに御用聞きに回った。相手にされなかった。
私はここで挫けては駄目だと思い、休み時間になる度にみんなに「難事件はないかね?」
「何か探して欲しいものがあるのじゃないのかい?」と聞いて回った。うっとおしがられた果
てに、クラスの「中島さんの消しゴムが無くなった」という事件を無理矢理聞き出し、早速、
現場検証を始めた。・・・消しゴムは見つからなかった。

これが、私の始めて関わった事件である。いきなりの迷宮入りになった。

その後、社会的には何くわぬ顔をし普通 の仕事に従事しながら、影の探偵として活動し、
現在までに様々な事件を解決した。国際的な活躍もしているが、ここには明かせない。


そんな私の所に、rui★ginkoが血相を変えて飛び込んできたのは、今から一週間程前の事。
それが今回のこの事件とこの私、
名探偵 銀子一耕助との出会いだった。


その日は朝からシャンプーした。
それはともかくruiの顔色を見て唯事では無い、と判断した私はおもむろに口を開いた。
「君は昨夜から眠っていないね。何か深い心配事を抱えている。そして、君の家に飼っている猫は
気が強くて、最近、君はおにぎりせんべいが好きになった。おまけに歌が上手く無い。動物占いは
コアラだ。」「ど、どうしてそれが・・・」ruiは驚いた。
「簡単な事さ・・・・」「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」「・・・・・・・・・・・あの」
「ん?」「教えてくれるんじゃ無いんですか?」
「何を?」「いや、だから、僕のどういう部分からそれらの事実を導きだしたか、詳細を」
冗談じゃ無い。コイツは何を考えているのだ。
Mr.マリックに本当はコインに穴が開いているのじゃないのオ?教えてよ〜となれ合うようなものだ。
デビッド・カッパーフィールドのショーの最中に本当は体をワイヤーで吊ってるんだよね、と隣のお客に説明する
ような不粋なヤツなのか、コイツは?推理の理由など言える訳ないじゃないか、適当なんだから。
しかし、私はここで威厳を無くさぬよう、細心の注意をはらって答える事に決めた。
「それはヒミチュ・・・でチュ」・・・・・・威厳を保とうと唇に力が入り過ぎた。
ruiが帰ろうとしたので私はすかさず彼をつかまえた。「事件の詳細を聞きたい」
そして彼が語りだした事実を聞いてゆく度に、私の灰色の脳細胞が反応しはじめたのである。
これは前代未聞の難事件だと。


「ウィステリア事件調査ノート・1」

2003/07/31 (木) 00:29
ruiのホームページ掲示板に書き込みあり。ハンドルネームは「ウィステリア」

・「多分ruiさんには、私が誰であるかは、わかっているでしょうね」
  知り合いである事には間違いが無い。しかし、ruiには心当たりが無い。
・「ヤマトというと決めゼリフが「人類滅亡の日まであと365日」・・・」
  何を突然言い出したのだ?ruiが眠れなかったのも無理は無い。
・「とりあえず私もひとことだけ。あと、39日・・・」
  こ、恐い・・・。何がだ。何が39日だと言うのだ。

ここで、この「ウィステリア」なる人物の心当たりと「39日というカウントダウン」について
の心当たりを、rui★ginkoだけではなく彼の関係者にも聞き込みを行ってみた。

まず最初に依頼人から
音楽担当 rui★ginko
「ウィステリアという人物は聞いた事がありません。39日という日数にも同じく心当たり
は・・・」

役者担当 涙 銀子
「おいおいおい、何だってンだよ薮から棒に。オレが犯人だってぇのか?冗談はよしてくれ!
や、止めろ!お、オレは何にも知らねェ!うあっ!・・・・・こんな感じの演技でどうだい?」

戯曲演出担当るいぎんこ
「聞いた事もないね。私は真実を語っている。ミステリィは嫌いじゃないが、もしも、私がそう
いう事件に関っていると言うのなら、その証拠をあげて戴こうか。できるかい?ふん、ほうら見
ろ。あとは弁護士を通してもらおうか」

広告業界担当ルイギンコ
「え?なあに?あっはっは・・・・嫌だア。・・・そう、いいでしょ この色?高かったのよ〜、
あ、解る?テレビショッピング。でも、あれよね。いつも思うんだけど、テレビショピングの商
品。今ならこれをお付けして何とこのお値段!っていうけれど、オマケ無しで安くしてくれるほ
うがいいよねぇ?・・・・お役にたてたかしら、こんな情報で。また、いつでも聞いてね。協力
するわね。」

イベント業界担当吉田さん
「いえ、滅相もございません・・・私なんぞは謎とか不思議というモノに無縁の男でして、はい。
心あたりですか?・・・ありませんねえ。いえ、何も隠していませんよォ。・・・は?これで
宜しいですか?あ、ども。私、忙しい時期に入って参りましたので・・・これで失礼を」

その他担当ルイギン
「知らないね。オレはほら、他のヤツらと違っていろいろな分野を担当してるからさ。
心当たりがあるとしたら可能性は一番高いんだろうけど・・・何?39日?・・・・・・・・・
・・・・あ、そうか!あれだよ!まいったナァ・・・俺が解明しちゃったよ・・・。いいか?
正解を言うぜ、よく聞きな。「人の噂」だよ・・・・・な?昔から言うだろ。ほら「人の噂も・・
・・・七十五日か?すまん。」

底力担当 るい金庫
「えっ?出番?・・・まだ?あ、そう・・・・・・・・・」

正義の味方担当のGINKO仮面
「やあ!君も元気そうだねっ!お互い正義の為に働いているから大変だねえッ!ハッハッハ!
いやあ、君とは仲良く出来そうだ!他のヤツらは相手にしてくれないんだよ!まあ、ヒーローは
いつの時代も孤独だけれどねっ!うあっはっは!・・・ところで、君が僕と同じく、正義の為に
働いているという事は・・・もしかして・・・僕達、ライバル?おおっ!そうか、君は僕の宿敵
かあっ!こんなところに潜んでいたんだなっ!くっそーっ!気づかなかった!覚悟しろっ!受け
てみろっ!GINKO〜ビイィィィーー〜ー〜ー〜〜〜ームッ!・・・・・・・何とも無いのか?・・
・ ・・ふっふっふ。なかなか手強いヤツだな。敵ながら天晴れなヤツだ。」

特別出演 だいじょうぶくん
「うん(ち)。だいじょおぼ だよお。うん(ち)、うん(ち)・・・うん(ち)、わかった。へんな
ひとには きお つける。・・・んでね ぼくが おへんじするとき ほんとうは「うんち」って
いってたの しってた?・・・あっはっは・・・だ〜まされただ〜まされた ばんだ〜い!

 

・・・・・・疲れる聞き込みだった。
そして、よけい混乱した。
しかし、必ず、この中にいるはずだ。謎の人物「ウィステリア」と関係を持っている人物が。

私は必ず解明する。この驚くべき事件の真相を・・・(次回に続く)

     
     

2003.08.09

■音楽担当 rui★ginko

Sat.

照和が夜明けを呼んでくる

どんなに長く感じる夜でも、明けない夜はないとアイツは言った。
なのにアイツは夜明けを待たず、漆黒の闇を鋭く切り裂きふるさとに向かう、
最終列車に乗って行っちまったナ。
この街に残されたのは手垢の染み付いた古いギターと
アイツと同じ夢を見た憶病者の僕ひとりだ。
いつでもそうだ。止まっていても何もいいことなんて起こらなかったから
僕はひとりで歩き出したんだ。
いつもそうだ。仕方なく。

夏に浮かれる僕を脅かす様に日本列島を台風が北上し、
北の海の彼方に安っぽい奇術師のラストステージを演じて消えた夜。
僕はまた「照和」にやってきた。
すべての人びとの位置エネルギーが僕の存在を解き放ってくれそうな
そんな、優しい、朝の光に出会うために。

 

今夜のライブの前に僕はどうしても伝えておきたい事がある。
僕は明日引っ越しなんだ。
どうしてって?家が狭いからさ。
どうして狭いって?僕の荷物が多いからさ。
どうして僕の荷物が多いって?僕が、貧乏性だからさ。
貧乏性の僕はよくいちごさんに怒られる。
いちごさんって誰だって?・・・・・えと・・・宇宙一、寛大で我慢強い人かなあ?
「即答くん」とあだ名される僕が瞬時、答えに窮してしまう程、
いちごさんの寛大で我慢強い心は僕の貧乏性に呆れ果てていた。
居住空間にたまってゆく僕の宝物は、何故だか彼女にはガラクタに見え。
今世紀末の「なんでも鑑定団」の番組内で中島誠之助(鑑定歴176年)に
「いやあアア〜〜、いい〜〜い〜〜い、シゴト・・・・・して・・・ワシの飯まだかア?」
と言わせる運命を担った銘品の数々が、
何故だかゴミに見えてしまう不思議な現象に日本列島が台風の目の中だった。

えっと・・・・何が言いたいかというと、とにかく僕の本やビデオや下手な絵やギターや
洋服やガメラやモスラ。家に置いてある僕の持ち物のすべてが邪魔で生活ができなくなっ
たのである。
彼女は新しい住処を見つけ、僕が着いて行こうとしたら「ガラクタ持ち込み禁止令を遵守
するのであれば許す」と、ここでも寛大な御処置をほどこして下されたのであった。
さすがに僕が大切にしてきた宝物をすぐさま磔獄門の刑に処す!とは言われぬ 大人物。
そのまま前の住居は僕の仕事場として生き長らえ、千種区の宝島と噂されるようになるの
にも、さほど時間はかかるまい。ふふ、しめしめ。

今日はそういう歴史的な日の前日であったため、朝から引越会社の女性の方が僕の家にガ
ラクタ以外の物の箱詰めに来て下さる事になっていた。
昨夜、それを知らされた僕はそりゃあ驚いたよ。
どうしてって?
僕の今日のスケジュールは朝一番のWebページ更新に始まって、
昼一番のWebページ更新の後、
昼下がりから夜のライブのための猛練習、という超過密スケジュールだったからさ。
とても引越の手伝いなんてできない。
いちごさんは「別に手伝わなくていいよ」と仰って下されるのだが、
僕はギターを弾かなきゃならない、それが問題なの。

だって考えてもごらんよ、引越会社の人にしてみたら、あかの他人の家の引越の準備で
茶わんやコップを汗をかいて梱包している最中、何の説明も無くそこの主人が、おもむろに
ギターを取り出し横で歌い出すんだよ?
勤労意欲ってどういうモノだったっけ?と辞書を引き直すでしょう。

とてもそんな真似はできない、でもやらねばならない。
何故なら今夜は「照和」のライブだからさ。

今朝、早くその女性がやって来た。
品の良い奥様で好感を持った僕は、恐る恐る切り出してみた。
「僕がギターを弾く事によって何か貴女に御迷惑をおかけしますか?」 「はあ?」
い、いけない!喧嘩を売っている訳じゃ無いんだ。落ち着け・・・。
「僕はギターを弾きたい。何故なら下手だから」 ・・・テーマがずれてる。
「Hey ! 僕はギターマン!へたっぴー違う。インディアン嘘つかない」 思いつきで書く事は
やめよう、と反省した僕の目の前で、彼女はすでにテキパキと仕事にかかっていた。

引越のどさくさの中に、一人ギターを奏でる呑気な父さんを演じた僕は何度も謝りながら
歌っていた。
彼女はとても優しい御夫人で調子はずれの僕の歌に耐えながら、
皿を取り落とす事も無く見事に仕事をこなして下さった。さすがプロ!

にこやかな笑顔で仕事を終え、帰られる彼女を見送って僕もギターを担いだ。
今夜のLIVEステージ「照和伝説NAGOYA」に向かうために。

 

便利なもので、もう「照和」に着いた僕は、時間がギリギリだったために
すぐさまマイクの前に座ったんだ。
池田さんやマネージャーのMさんの貴重な時間を、僕の音合わせの為に割いてもらうのが
申し訳なかったからね。
チューニングもそこそこに歌い出した僕の目に、横で笑っている池田さんの姿が入った。
何?と歌いながら目で問いかけると、僕の背後を指差して笑う。
不審に思って振り向くと、ステージ奥にセットしてあるドラムに座って、クラシックギタ
リストの大嶋さんが、素手で僕の曲にあわせてドラムを叩いている。
な、何をしとんじゃ!この本格派スパニッシュギタリストは!と、ツッコミの言葉でさえ
格調高くなってしまう困った人物は、
楽しそうにドコドコとやっている。

ひるみかけたが何とか持ち直し、真面目にリハを続けようと歌い続けた僕。
だって
、ちゃんとリハーサルしないと怒られるんだよ。池田さんプロだからすごく厳しい
もん。
その時、僕の左、五十センチほどの近距離で今度はシャカシャカとタンバリンの音がする。
・・・ったく、池田さんに言い付けるぞ!誰だよ、と盗み見たら・・・・池田利明本人が
踊り狂ってた。

こ、こらあっ!こいつらいったい・・・
先輩とは言え、あえてこう呼ばせてもらう!「お前たち」かあっ!

きっと池田さんは大嶋さんのドラム乱入に血が騒いだのだと思う。
僕は先週の本番前の「Mr.IKEDA懐メロショー IN 田園」の苦い経験を思い出して先に手を打
って置こうと、
「あの、お願いだからリハぐらいは、ちゃんと・・・」
まだ言い終わってもいないうちに池田さん 「おう、ちょいとそのギター貸せよ」
マイクにしがみつき抵抗する僕を押し退け、僕からギターを奪った彼は、
ステージど真ん中に落着き、吉田拓朗メドレーを始めた。
僕はまだ、リハーサル曲の始め八小節ほどしか歌っていないんだよ。
レベルチェックの真っ最中だよ。
僕がいつか可愛い後輩のリハに立ち会う時があったら、
自分の時間を割いてでも歌わせてやる事を誓ったのは言うまでも無い。

いつまでたっても衰える事のない「池田拓朗オン・ステージ」に閉口した僕とマネージャーの
Mさんは、こっそり二人で池田さんの背後に回り、彼の背中のふたを開け、
電池を使い古しのやつと入れ替えておいた。
気分よく歌っている彼は気付いていないけれど、
ほんのちょっとパワーがなくなったのを見て安心した。

マイクを取られ何もする事がなくなった僕が、お店のカウンターに寂しげに座っていると、
大嶋さんが左手の薬指をなめながら現れた。
「どうしたの?」と聞こうとして驚いた。彼の左手薬指からの大出血。血がとまらない・・・。
世界的なクラシックギタリストの黄金の指が、本番直前で傷付いた!大事件だ!
いったい何が原因で・・・原因を聞いた僕は言葉を失った。
先程、ドラムのシンバルを素手で叩いた時に切れたんだと・・・・・・・・・・。
世界的なギタリスト。
日本でただ一人のロメリスタ。
あなたっていったい・・・・・・・・・・・・。

大嶋さんを気づかいながらもきっちり拓朗全曲歌い、本番前に力のすべてを出しつくした池田
さんから、赤子の手をひねるようにギターを奪い返した僕は、彼に今日のステージの順番を聞
いた。
「おう、ルイギン。今日、お前、五番目な」
僕は自分の耳を疑った。だって、いつも僕はトップバッターだったから。
「ほ、本当ですか?ありがとうございます!」 ようし、頑張らなくちゃ、と気持ちも新たに
ギターの弦を張り替えるために、すべて外しきった時、池田さんが楽屋に飛び込んで来た。

「おい、ルイギン。お前、もういっぺん今からリハやれ」「は?」
「早くステージ行け。お前の歌を聞きに来てくれた人が、今日お前が出る時間までいられない
んだ。だけど、ちょっとだけでも聞きたいんだと・・・とは言ってもギターの弦張ってねェな。
まあいいや、俺の使え」「はへ?」「早く来いよ」池田さんは楽屋を飛び出して行った。

・・・状況を何となく理解した僕は、感謝の気持ちで一杯に。
ここでためらっていてはこの先やってゆけないぞ、と思い、彼のギターを引っ付かんでステ
ージへ。
池田さんは音のチェックをしながら見守ってくれる。
「もうそのままでいいから、立って歌え」「た、立って?」
僕は立って歌うとヨロヨロするのだ。
でも、ストラップを肩からかけ、池田さんのギターを気づかいながらも、
どうせやるなら徹底的に。
「うあい!どもっ!お待たせしましたルイギンコ、歌いますっ!」

力の限り歌い、お礼に客席へ行く僕に「お前、力入りすぎ」
鉄は熱いうちに打てのMr.IKEDAの親心。
お客様は「照伝」デビューの頃から僕を見守っていてくださるTさん。
感謝の気持ちで頭を下げる僕に「いやあ、良かった。池田から、最近ルイギン良いよ、って
聞いたから聴きに来たけど、本当に変わった。良くなったね」と言って下さった。
Tさんに改めて感謝。そのまま気持ちをありがたく受けて心が泣いた。

ん?「池田から聞いて」?・・・・・・本当に涙を堪えるのは大変なエネルギーが必要だ。

歌い続けていて良かった。本当に。・・・でも、やはり今夜もrui★ginkoはトップを飾ったのね。

本番前にほとんどの力を使い果たし、いよいよ今夜のLIVEがスタートした。
まず、トップは「照和」初登場。桑山弘好さん。甘いマスクで迫り来る独自の歌世界。聴かせます。
二番手も初登場。南野健司さん。渋い口髭で熱いブルーズを。むっちゃ迫力。格好イイ!
三番手は癒しの歌姫、倉谷梨里さん。音楽のジャンルを遥かに超えて深い愛の世界へ。
四番バッター、御存じ日本唯一のロメロ技法継承者。世界に誇る大嶋芳さん。指先の負傷にも
魔法の様な彼のテクニックはびくともしない。
そして五番手・・・rui★ginko。本番前に歌い終わった時点で「お疲れさん。もう帰っていいよ」の
言葉を無視しての強行ステージ。退場させられる事もなく無事突破。
そしてラストを飾るのは、無限の優しさで客の心を狙い撃つ変化自在のスナイパー、池田利明さん。
ギターを奪うのだけは止めて欲しい。今夜も濃すぎるステージを見事あの小さな体で受け止めて、
お客様と僕達に最高の夜をプレゼントしてくれた。

ステージはお店の営業時間をはみ出しながら、
台風よりも強い風を僕達の心に巻き起こして終了した。

後ろ髪を引かれる思いを振り切り、今夜のLIVEに足を運んでくれたジョーさんとT笠クンと三人で、
深夜の国道一号線に立った。
帰りの 交通機関を失いタクシーを呼び乗車した僕達は、一路最寄りの高畑駅へ。
地下鉄に乗ろうと入り口に向かったT笠クンと僕は、最終電車に運ばれてきた乗客の波とすれ違った。

最終地下鉄に・・・乗り遅れた。

ジョーさんを見送ってLIVEの余韻にひたりながら、
T笠クンと僕は近くの「すかいらーく」で話し込んだ。
まだまだ夜は暗く深い。帰り損ねた僕達は眠気を弄びながらも止めど無く話した。
ずっと前から話してみたい事がたくさんたくさんあったから。

深夜三時をすぎた頃、
台風が去ったあとの夜風のにおいとともに、店内にジョーさんが姿を現した。
彼氏のKクンをともなって。
僕達四人はそのまま子供のように話した。
今夜のLIVEが無ければ永久に訪れなかったであろうこの状況設定に、僕は感謝した。
とてつもなく大きなチカラに動かされている気配を感じた気がするけれど、それは今夜の
LIVEの残照?

それともこの不思議な夜の闇の・・・ん?・・・・・・窓に横たわる大きな空はいつしか

生まれたばかりの夜明けの光に輝いていた。

     

2003.08.10

■広告業界担当
ルイギンコ

Sun.

四角い宇宙〜月と星が綺麗

おっはよう〜! 今日はいよいよお引越の日なのよ。
アタシもう朝からすっかりお寝坊しちゃった。あっはっは!
でも、何だか元気がいいでしょ?カラ元気よ〜。おっほっほ!
アタシがカラ元気なのはアイツのせい。 ほら、
音楽担当のrui★ginko !アイツのおかげ!
アイツったらね、今日がお引越だって解ってる癖に朝帰りしたのよ、信じらんない、もうっ!

大体ねェ・・・前日に人手がたりなくて、お引越やさんにわざわざ頼んでまで荷物梱包して
もらっている横でギター弾ける?普通・・・。アタシなんて座ぶとんもひけないわよ、申し
訳なくて。 応援歌ぐらいは歌ってあげてもいいけど。

「梱包の歌」
♪つ〜つ〜ん〜で〜ひ〜らぁい〜てぇ〜 て〜をぉうって〜つ〜つ〜ん〜で〜 ま〜たひら
いて〜て〜をぉうって そ〜の〜てぇ〜を〜・・・仕事が、はかどってないけどネ。

こんなのもあるわ。
♪や〜れやれ できたぜ ハコヅメ〜(北島三郎「箱詰の女」)
古かったかしら。他にも、クラシックなんかもいいわネ。

チャイコフスキーの舞踏組曲「クルみたがり人形」より第三曲「梱包党の踊り」・・・・♪・・
・・・・♪・・・?・・・あ、これ歌が無かったわ。

まあ、とにかくそういう訳で、 本当に常識知らずのrui★ginko本領発揮よ。もう、すんごく
恥ずかしかったわ!
なのに、なのにその上よぉ!アイツはお引っ越し当日の今朝「朝帰り」ア・サ・ガ・エ・リ
よっ!もう、その勇気に乾杯!
で、アイツったら涼しい顔して帰って来て、朝になってから眠り始めたのよ。
当然、一時間程でたたき起こされてぼんやりしてたわ。

そこにやってきたのよ〜!誰がって?お引っ越しやさんに決まってるでショ?
もう、みんな朝から筋肉モリモリよ〜!高血圧バリバリよ〜!体育界系モードのマッチョコス
チュームをさらに熱血漢風バージョンにレベルアップして、そりゃあもう凄かったわ。
アタシ、何の音かしらと思って、思わずあたりを見回した・・・彼等の体だったのよ。テキパ
キ!テキパキ!ってうるさいの何のって・・・。

ところが、彼等がどんなに引越しのプロで、手際よくテキパキと働いてくれても我が家には問
題があったの。
玄関から荷物の置いてある部屋にゆくまでの廊下の片側に、ずらりと本が並んでるのよ。
これはヤツの仕業。
戯曲演出担当るいぎんこ。ヤツの一生読みもしない日本古典文学全集全
五十巻ひら積み状態。邪魔で邪魔で・・・。
この本は年に一度の千種図書館が行っているリサイクル図書で貧乏性のるいが貰って来たのよ。
図書館で
るいがこの本をぼんやりながめていたら、職員の人から「おや、これですか?これ、
いいですよ。本来はお一人十冊までですが、今日はもう終了間際の時間ですから、特別 に、
これお好きなだけ持っていって下さい」とテレビショッピングのように言われ、貰って来たの。
何となく、あまりに薦められるので、本当は処分したがっておられるのかな〜とも思えたけど、
るいは後先考えずにタクシーで運んで帰ってきたのよ。
そいつが今日、ここにきてこんなに邪魔になるとは、全然・・・予測つくはずよ!

引越会社のたくましい男性たちは、みんな優しい。 床から80B以上は積みあがっているそれ
らの本の高さまで、すべての荷物を持ち上げないと玄関から外に出られないのよ。腕のチカラ
だけですべて持ち上げて運び出してたわ〜。
重い食卓や食器棚。普通は二人で持ってもかなり重い。
それを腰じゃ無くて胸の高さまで持ち上げて運んでくれたのよ。
時々、本の山の上の方に積んであるちっちゃな文庫本が引っ掛かって邪魔するの。
文庫本の分際で黒檀の食器棚の行く手を阻止しようとしてるのよ。
引越会社の優しい男の人はやんわりと
るいに言っていたわ。
「すみません。この・・・真夜中の・・展覧会ですか?・・・これをちょっと・・・」
申し訳ないやら恥ずかしいやら。

ruiのギターはあるし、るいの本は邪魔だし、吉田さんのイベント営業用衣装はぶら下がって
るし、
GINKO仮面のマスクは踏んづけるしで、むちゃくちゃ。 感心なのはアタシだけ。おほ
ほ・・・だって、アタシの仕事の道具は全部、自分のお部屋に入ってるんだも〜ん!
これからこのお家はお仕事場になるから、デザイン関係の荷物は動かさないんだも〜ん!
おほほほ。

お引越しって本当に大変。実感したわ。
でも何も手を出せないうちにプロの屈強な男たちの手であっと言う間にトラックに。すごい!
そして、トラックの男性陣と我が嫁、いちごさんはそのまま新しいお家へ。今度は引っ越し荷
物の搬入にね。
え?アタシ?アタシはほら、チカラが無いでショ?
だから邪魔になるから、もうしばらくここにいるの。やだあ、サボってんじゃないわよ。
お仕事もあるし・・・・・・あ、いけない!始まっちゃうわ!テレビテレビ・・・。

 

三時過ぎに、いちごさんから「もう、荷物ぜんぶ搬入終わったよ」と、仕事場に電話があったの。
アタシは慌ててテレビの音を消して電話に出たわ。すると彼女が言うの
「ちょっとだけ、こっちに来て留守番してくれない?食事もしたいし・・・」
お、お昼まだだったの?慌てて冷やしうどんと宅配ピザの残骸を処分しながら力強くうなずい
たアタシ。

 

新しいお家は東山動物園のすぐ近く。夢みたい。
ライオンさんやトラさんと御近所付き合いできるなんて。
町内会の会長は今年度からペンギンの川合さんに変わったらしい。
学区長が教育熱心なメガネザルの小池さん。
防災係りは敏捷なヤマネコの早川さん。
ちょっと前まで忙しかったコアラの鼻居さんがキンシコウの孫さんとバトンタッチした。
ほんと夢みたい・・・・。

アタシは仕事場を出て新しいお家に向かったの。歩いて十分程の距離。
新居に着いて玄関を開けて驚いたわ。今までのお家より広くなって、畳の新しい匂いがして。
何だか自分の家じゃないみた〜い!って叫んだら「そうなる可能性はあるね、かなり」って、
いちごさんの声がした。恐わ〜い・・・・・・。

どのお部屋からもベランダに出られるようになっていて楽しいし、景色は結構遠くまで見え
るし。アタシの感性にピッタリフィットよ。
やっぱりここを仕事場にしようかしら・・・え?荷物持ち込むからダメ?

息子のお部屋と寝室は東向き。いちごさんのお部屋とリビングは南向き。
アタシのお部屋は北向きだけど、遠く街の方が見渡せて幸せ。
自分のお部屋に入って驚いたわ、引っ越しの荷物置き場になっていたの・・・・・・。
・・・まあ、当分、アタシの荷物は持ち込まないから構わないけど・・・。
壁に細いドアがあったので開けてみた。
そこから小さなベランダに出る事ができるの。
他のベランダとはつながっていない、小さなちいさな二畳にも満たないスペース。
壁は高くそこにしゃがむと空だけが見えて素敵。
自分の部屋より、このベランダだけでいいわ、アタシ。

いちごさんと交代してあちこち冒険してまわっているうちに夜になり、
息子が帰って来て三人で荷物を夜中までかかって解いた。
アタシも仕事したわよ〜。ゴミ箱を組み立てたのよ!他にも、電気を設置したり、ゴミ箱を組み
立てたり、電話台を移動したりゴミ箱を組み立てたり・・・忙しかったわ。
嬉しかったのはイベントでお世話になってるH井さんから「引っ越し進んでますか〜?」のメー
ルを戴いた事。そして、同じ会社のSさんやTさんから「引っ越しそば食べに行きませんか?」と
お誘いがあった事。
「照和伝説」の池田さんやMさんから「引っ越しどう?」と電話で問いかけて下さった事。
もっと、もっといっぱい・・・
自分が本当にいろいろな人たちに支えられているな、と感じた夜でした。

夜中、息子と嫁が眠ってから
ひとりで自分の部屋のベランダに出てみたの。
煙草に火をつけて深く煙を吐き出したら、頭の上
小さく四角く切り取られた夜空に

美しい月と無数の星がお祝いをしてくれているかのように輝いていたわ。

     
     

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